忍野を彩る季節の花たち

富貴草 (フッキソウ)

3〜5月にかけて、穂状に白い花を咲かせる。田んぼの畦や林の中に群生して生えている。フッキソウは深い雪の下でもじっと耐えて冬を越すことから、シノブグサとも呼ばれ、忍草の地名の由来ともなったと伝えられ、村の花として親しまれている。和名は、常緑の葉が生い茂ることから、繁殖を祝う意味が込められている。

辛夷 (コブシ)

3〜4月にかけて、6〜10cmほどの大きな白い花を咲かせる。春の訪れを真っ先に伝えてくれる花。花の咲く角度によって、その年の雨量を占うこともある。名前のとおり、つぼみの形が拳のように見えることから、この名前がついた。しかし、花言葉は友情である。秋になると長さが5〜10cm赤い小さな実をたくさんつける。

富士桜 (フジザクラ)

山地に自生するマメザクラの別名だが、富士山の周辺によく見られる桜のため、地元ではフジザクラとして親しまれている。葉は、卵型で縁に切れ込みがある。忍野では4月下旬から5月初旬頃、葉より先に淡紅色の小さな花が満開になる。そして花が終わると黒紫色の実をつける。東円寺の境内に咲き誇るフジザクラは見事。

富士薊 (フジアザミ)

9〜10月にかけて、10cmほどもある赤紫色の花を咲かせる。アザミの中では一番大きく、富士山に多く自生するものが新種として、この名前がついた。標高1000m付近の河原やガレ場でよく見かけることができる。葉っぱもかなり大きく細い毛がはえており、葉のふちには堅いトゲもある。根はゴボウのようで食べられる。

梅花藻 (バイカモ)

7〜8月にかけて、水面に白い小さな花を咲かせる。まるで梅の花のような花を咲かせることから、この名前がついた。清浄な流水の中でしか生育することができない、非常に繊細可憐な花である。忍野を流れる小川や忍野八海ではよく見られ、2メートル近くまで成長する長い茎が水中に揺らめいて、独特の光景を見せてくれる。

山椒薔薇 (サンショウバラ)

6月頃、ほぼ入梅と同時に5〜6cmほどの淡紅色の花を次々に咲かせるが、わずか1日ほどで咲いた花はちってしまう、なんとも可憐な花である。原産地は富士山と箱根周辺であり、葉っぱの形やトゲのあるところがサンショウにそっくりなことから、この名前がついた。以外と丈夫な花なので鉢植えなどでも十分育てられる。

蕎麦 (ソバ)

食べる方ではお馴染みのソバも、きれいな白い花を咲かせる。忍野にも富士山をバックに広がるソバ畑が、夏から秋にかけて見頃となる。「75日たてば旧へ返る (75日で種が取れるほど実りが早い)」と言われるように、種を蒔いてから収穫までの時間が短い。肥えていない火山灰の土地だった忍野にとっては、昔から貴重な食材だった。

天然記念物の樹木たち

イチイの群衆

【県指定天然記念物】
忍草浅間神社の境内に入ると、他の神社とはちょっと雰囲気地が違う。それは社殿や仁王門をぐるりと囲むように、高さが20m以上の大木や幹の下部に空洞のあいているものなどイチイの巨木が群衆しているからだ。この木は富士山にも自生しており、昔イチイから官位一位の高官のしゃく笏がつくられたのでこの名前がちたという。秋になると真っ赤な甘酸っぱい実をつけるが、種には毒があるので注意。

大ケヤキ

【村指定天然記念物】
忍草浅間神社境内の中ではひときはおおきなケヤキも見られる。見るからに大きいが、高さはなんど37mに達する。根回りもおよそ10mと太く、枝張りは東西23m、南北には20mほど伸びている。秋になるとオレンジ色にかがやく紅葉がとても美しい。日本を代表する広葉樹のひとつと言えるだろう。材としても狂いが少なく湿気に強いことから、神社や寺の建築にも使われる。

大トチの木

【村指定天然記念物】
内野浅間神社境内にはトチノキの巨木がある。高さは35.5mもあり、根回りも9mに達する。枝も大きく伸ばし、東西に26m、南北には23.5mと、威風堂々だ。5月頃には空に向かって直立した房に小さな白い花をたくさんつけ、秋に熟した実ではでんぷんを多く含むことから、あくを抜いてすりつぶし、餅に混ぜ込むとおいしいトチ餅ができあがる。

内野の大イチイ

【村指定天然記念物】
内野のイチイは忍草浅間神社の群衆とはちがい単独だが、墓地にありお墓を守るように大きく枝を伸ばしている。木の高さは約15m、根回り6.6mあり、枝は東西に向かって20m、南北へは19mとバランスよく立っている。樹勢も衰えをみせず旺盛で、風格がある。別名をアララギとも言い、北海道ではアイヌ名でオンコと呼ばれるそうだ。